映画「英国王のスピーチ」あらすじ・感想。国のトップとはどうあるべきなのか

映画レビュー
出典:映画.com

映画「英国王のスピーチ」あらすじ

現在のイギリスのエリザベス女王の父にあたるジョージ6世の実話を綴った作品で、第83回アメリカアカデミー賞で作品、監督、脚本、主演男優賞を獲得しました。

内気で自分に全く自信が持てないジョージ6世は、幼い頃から吃音症に悩まされてきました。

父からは「しっかり喋ろ」「胸をはれ」とプレッシャーをかけられ、兄からは吃音をばかにされ、スピーチをする場面では人々から哀れなまなざしを向けられてしまう。

物語の序盤は「なんてなさけない」と思えるような雰囲気と、とても未来の王になるとは思えない自信のなさをまとっています。

ジョージ6世の妻はその中で、信じられないほどしっかりとした芯の強い女性で、あらゆる場面で内助の功を発揮していきます。

ジョージ6世はなんとか吃音症を直そうと、英国の著名な医者や言語療法士など様々な方法を試しますが、全て思うように成果を出しません。

そこで彼の妻が見つけた言語療法士ローグとの出会いがこの物語を変えていきます。

ローグはその時代ではかなり型破りなタイプの治療方針な言語療法士で、最初ジョージ6世(バーディー)は彼の言うことに「ばかばかしい」と反発し治療を受けるまでに時間がかかりました。

しかし、実は彼の方法は確かに自分のどもりを直している事実を知ると、一生懸命治療に励むわけです。

様々な葛藤と自分の過去のトラウマをローグと共に乗り越えていく中、時代は第二次世界大戦へと向かっていきます。

そして、バーディーが最も恐れる演説をしなくてはならない状況になります。

ローグと共に演説をするためにマイクの前に立ったジョージ6世は、国民一人一人に向けて威厳溢れる、かつ心に訴えかける熱い演説をすることができたのです。

その時のジョージ6世の姿は最初の自信なさげな気弱な印象とは打って変わり、自信に満ち溢れるまさに王の威厳をしっかりまとった佇まいに変わっているのです。

この一連の変化を演じきった俳優コリン・ファースの演技にも注目です。

404 NOT FOUND | あらガール
いろいろな作品の「あらすじ」を紹介。感想や考察も。

映画「英国王のスピーチ」登場人物・キャスト

  • ジョージ6世:コリン・ファース
  • ライオネル・ローグ:ジェフリー・ラッシュ
  • エリザベス:ヘレナ・ボナム・カーター
  • エドワード8世:ガイ・ピアース
  • 大司教コスモ・ラング:デレク・ジャコビ
  • ジョージ5世:マイケル・ガンボン
  • ウィンストン・チャーチル:ティモシー・スポール
  • ローグ夫人:ジェニファー・イーリー
  • 監督:トム・フーパー
  • 製作:イアン・カニング
  • エミール・シャーマン
「魔女の宅急便」のあらすじ・感想。少しずつ「大人」になっていく成長物語
「魔女の宅急便」のあらすじ 主人公:キキは魔女の女の子。 魔女のしきたりにより13歳となった彼女は月夜の晩に旅立った。 相棒の黒猫ジジとともに故郷を離れ、たどり着いたのは海の見えるきれいな街コリコ。 初めは慣れない場所やキキ...

映画「英国王のスピーチ」ネタばれあり・感想

ポイント1:言葉の重みと思いを伝えること

この映画で最も多くの時間を割いて描かれているのは、吃音症を克服することだけではなく、問題がジョージ6世(バーディー)の内面にある過去に受けたトラウマやプレッシャーに押しつぶされそうになる姿です。

作品の中盤、ジョージ6世の父が亡くなる場面でバーディーはローグの部屋を訪れ、つらつらと自分の過去について話し始めます。

その内容は乳母から受けた想像を絶するいじめ、兄からの嘲笑、父からの厳しいしつけ、アイデンティティをことごとく否定されてきたあまりにも壮絶な過去でした。

それでも彼の内側には国民を思う気持ちや、国の行く末を案ずるリーダーとして一番必要な土台がありました。

ローグはまず彼の気持ちに寄り添い、その過去と向き合い、しっかりそれを乗り越えていく道を示そうとします。

しかし、長年凝り固まった心はそう簡単にほぐれるものではなく、ローグとバーディーは何度も衝突します。

ローグ自身も悩みながら、王族としてバーディーを扱うのではなく一人の友として向き合っていきます。

次第にバーディーの心もほぐれていき、しっかりと自分の現実に向き合い、国王としての責任を背負う覚悟をするのです。

そのプロセスの中で、バーディーが国王になることに尻込みし、弱音を吐く場面があります。

戴冠式の前日「自分は王に向いていない。吃音症のあるかんしゃくもちの狂った王」だとローグにめそめそと話す中で、なんとローグは戴冠式で国王のみが座ることの許された玉座にふんぞり返って座っているのです。

怒ったバーディーは「そこは王が座る椅子だ」と言い放ちますが、ローグは全く動こうとせず「あなたは王になりたくないのだろう。なぜ私がどく必要があるのか。」とけしかけると「私には王の声がある」とバーディーが大声で言うのです。

ローグは気休めや慰めの言葉をかけるのではなく、バーディー本人から「自分が王である」ということを言わせることで王としての自覚を持たせます。

それ以降のバーディーはまさに王として国を思い、必死で働いていくのです。

第二次世界大戦を前にして、ヒトラーの演説を見たバーディーはヒトラーの演説の仕方に驚きます。

ヒトラーが話す言葉は理解できなくても、自信の溢れる物言いと人を惹き付ける動きにイギリスがこれから戦っていく相手の大きさを知ると共に、自分の演説が国民を鼓舞するために重要な役割を果たすのかを思い知るのです。

そして、映画の最後の場面の国民に対する演説は10分程度の物ですが、一言一言に重みがあり、映画を観ている私たちの胸をうつものになります。

彼のそれまでの苦悩と葛藤を知っているからこそ、演説の一言に価値を見出すことができるのです。

上手に喋ることが大切なのではなく、いかに人の心に届く言葉を伝えられるのかが求められているのかを知ることができます。

ポイント2:過去と向き合いポケットから出すこと

バーディーが国王になった直後、ローグの元を訪れたバーディーは「自分は王ではない。コインに描かれているのも前の王で国民も自分を王とは認めてくれない」と言います。

ローグはとてもシンプルな言葉でバーディーを励まします。

「そんなコインはポケットから出してしまいなさい。今度はあなたがこのコインにのるのだから」過去のトラウマ、親や兄のようにはとてもなれないという不安にさいなまれる彼にとっては一番必要な言葉だったと思います。

いつまでも過去のトラウマや不安をポケットに大事にしまっているのではなく、それを出すこと。

私はこの言葉にとても感動しました。

バーディーに一番必要だったのは、この「コインをポケットから出す」ということで、吃音に関する何か特別な治療を受けることではなかったことが分かります。

この教訓は何も国王に限った話ではなく、私たちの生活にも教訓として伝えてくれています。

過去のトラウマや自分なんてという劣等感をポケットから出して捨て去ることがいかにその後の人生を生きていくために必要なことなのか、自分の人生を生きる大切さを伝えてくれます。

まとめ

第二次世界大戦でイギリスが勝ち、ドイツが負けた理由がこの物語から見ても理解できました。

上から押さえつけるような演説をし、自分を褒めたたえるように仕向ける話し方をしていたヒトラーは滅び、国民に寄り添い、信じた言葉を心から必死に伝えたジョージ6世は国民から慕われる存在になりました。

これは今の日本や世界のトップにも言えることだと思います。

誰が今の日本のトップの言葉に胸を打たれ、心震える経験をしたことがあるでしょうか。

聞いていても嘘や全く中身のないような内容ばかり。

世界の混乱と困難に向き合うのではなく、まるで尻込みするような言葉ばかり聞かされている私たち国民はとてもみじめです。

他の国のトップはどうでしょう。

アメリカの大統領の言葉には国民を軽視し、私利私欲のしか考えてないような雰囲気を感じえません。

このことから見ても、国のトップが放つ言葉がいかにその時代を変えてしまうのかということが分かります。

心から熱い演説をするトップが表れることを思わず願ってしまうような映画でした。

タイトルとURLをコピーしました